idea factory from newspaper 2003 8 6
経営効率(business efficiency)
経営効率が悪い業界は、どこか。
官庁、役所をあげる人が多いでしょう。
詳しい人ならば、
いや、もっとも経営効率が悪い業界は、公社、公団、公益法人であると答えるでしょう。
しかし、意外な業界も、経営効率が悪いとされてきました。
それは、銀行です。
銀行は、サービス業です。
だから、預金者へのサービス向上を最優先で考える必要があります。
にもかかわらず、こんな事例が、かつて、ありました。
日本より治安がいいとは言えない欧米でも、
ATMの24時間運用は当たり前でした。
なぜ、預金者へのサービス向上につながるATMの24時間運用が、
日本で、遅れたか。
これは、優良で強い銀行が、このサービスを始めると、
ATMの24時間運用に対応できない弱い銀行が、経営的に苦しくなるためです。
この弱い銀行に、かつての大蔵省の役人が天下りをしていて、
弱い銀行が経営危機になると、天下り先がなくなってしまうという裏の事情はありました。
ともかく、かつての大蔵省は、弱い地方銀行などにあわせて、
本来、強いはずの大銀行を規制しながら、金融業界を守ろうとしてきたのです。
ついでに、天下り先も守ろうとしてきたのです。
今は、金融行政が、金融庁になりましたので、改善されたかもしれません。
さて、この弱い地方銀行をどうするかという大きなテーマは、
長年に渡って、先送りされてきました。
金融業界において、自由競争をすれば、弱い地方銀行は淘汰されます。
日本は、資本主義国であるので、それは当然であるという意見があります。
しかし、地方に行けば、わかりますが、
地方には、かつて都市銀行と呼ばれた大銀行がありません。
あるのは、やはり弱い地方銀行だけです。
弱いと言えども、銀行がなくなってしまうと不便です。
だからこそ、規制や行政指導で、弱い地方銀行を守り、
大銀行を押さえるべきであるという議論も成り立ちます。
いずれにせよ、弱い地方銀行をどうするかという大きなテーマは、
長年に渡って、先送りされてきました。
さらに、悪いのは、今までの議論のなかで、
「預金者へのサービス向上を最優先で考える」という視点が欠けていました。
さて、このような銀行業界と、同じような構造にあるのが、
建設業界です。
この構造は、大きな銀行と、星の数ほどある弱い銀行という構造です。
大きな建設会社と、星の数ほどある経営効率の悪い建設会社です。
さて、銀行業界は、改革へ向けて、出発を始めました。
しかし、建設業界は、改革どころか、未だに、旧態依然のままです。
こういう状態なので、今まで、行なってきた景気対策は、
景気対策と言うよりは、経営効率の悪い建設会社を救済する政策に近かったのです。
だからこそ、景気対策に数十兆円もの税金をつぎ込んできても、
さっぱり、景気がよくならないという結果になりました。
旧態依然の業界、銀行と建設業界、
しかし、この業界は、利権が豊富です。
改革が進むかどうかは、十分な監視が必要です。